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[非表示]領収書を渡した個人事業主から、源泉徴収された税額の確認のために支払調書を発行してほしいといわれるケースもあります。その場合、領収書だけでは対応できないのでしょうか。
この記事では、領収書の役割や書き方、ルールや注意点などについて解説します。領収書や源泉徴収の概要や領収書の正しい書き方を理解するための参考にしてください。
領収書とは
そもそも領収書とはどのようなものなのでしょうか。まずは、領収書の役割や他の書類との違いを解説します。
領収書の役割
領収書とは、金銭や有価証券の受取書のことです。お金を支払った事実を証明するために作成します。たとえば、会社員が経費精算の根拠書類として経理担当者に提示したり、個人事業主が確定申告をする際に経費の金額を確認するための資料として使ったりします。
領収書の内容に不備があると、経理担当者や税務署から差し戻される恐れがあり注意が必要です。その場合、顧客にも迷惑がかかるため、事前にルールを確認しておきましょう。
預り証との違い
領収書と預り証は発行する経緯に違いがあるものの、金銭を受け取った事実を証明するという目的はいずれも同じです。領収書は、商品やサービスを販売して金銭の受け渡しが行われる際に発行されます。
ただし、場合によっては、商品やサービスの提供が発生していなくても金銭を受け渡すケースがあるでしょう。そのような場面では仮の領収書が必要であり、領収書の代わりとして預り証を発行します。たとえば、前金、内金、敷金、手付金などの授受に対して預り証が発行されます。
支払調書との違い
支払い調書とは、特定の支払いをした場合に税務署への提出が義務となっている書類です。業務を依頼して相手に報酬を支払う際は、その時点で所得税を源泉徴収して納税する必要があります。支払調書とは、源泉徴収した所得税の金額を証明するものです。
領収書は、当事者同士が金銭の支払いと受取りをしたことを証明します。それに対して支払調書は、税務署に対して源泉徴収の事実や金額を証明します。企業と個人事業主のいずれであっても、所得税を源泉徴収した場合は支払調書の提出が必要です。
源泉徴収とは
源泉徴収とは、年間の所得に対して発生する所得税を報酬の支払いの際に差し引く方法です。事業者が源泉徴収をし、報酬を支払った相手の代わりに納税します。企業が社員に給与を支払った場合だけでなく、企業から個人事業主へ依頼して報酬を支払った場合にも源泉徴収が必要です。
勤め先が源泉徴収を行うため、会社員は確定申告が必要ありません。ただし、個人事業主は経費の計上も必要であり、自ら確定申告を行います。
源泉徴収額の調べ方
源泉徴収の対象となる項目としては、給与、賞与、退職金、支払報酬、支払い配当金などがあります。項目によって源泉徴収税額の計算方法が異なるため、注意が必要です。国税庁が発表している「源泉徴収税額表」を参考にすると、簡単に源泉徴収税額を確認できます。
個人事業主は、領収書などの根拠書類を集めて自分で確定申告を行っています。源泉徴収額を確認するため、企業に対して支払調書の発行を依頼する場合も多いです。
領収書の書き方
源泉徴収額の確認が目的であっても、基本的には支払調書ではなく領収書を発行すれば問題ありません。ただし、個人事業主は領収書を確定申告に使用するため、正しく記載することが大切です。
ここでは、領収書の書き方について解説します。
日付
金銭のやり取りがあった日付を記載します。年月日を正確に記載する必要がありますが、和暦と西暦のどちらでも構いません。ただし、年号や西暦は桁をすべて記載し、省略しないように注意しましょう。元号の最初の年であれば、元年と記載するのが一般的です。いつ領収書を発行したのか誰が見てもわかるようにしましょう。
宛名
金銭を支払った人に確認をとり、支払者の氏名や企業名を記載します。氏名や企業名は正式名称で記載してください。ただし、相手から「上様」と指定された場合は、具体的な氏名や企業名を記載しなくても問題ありません。
消費税法では、領収書には日付、宛名、但し書き、金額、発行者の住所・氏名を記載する必要があるとされています。ただし、小売業や飲食店の場合、金銭を支払った人の氏名は省略しても構いません。
但し書き
但し書きは、何のために金銭が支払われたのか記載する部分です。提供した商品やサービスの内容を具体的に記載しましょう。たとえば、「飲食代として」や「書籍代として」のようにわかりやすい内容を示す必要があります。一般的には「お品代として」という表現も使用されますが、正式な領収書として認められない可能性があるため避けたほうが無難です。
金額
領収書には、受け取った税込金額を正確に記載する必要があります。金額の改ざんを防ぐため、金額の頭に「¥」や「金」をつけたり、3桁ごとに桁区切りのコンマ(,)を打ったりするのがルールです。また、金額の末尾には「-」「也」「※」などを記載します。内訳の欄には、税抜き金額と消費税額をそれぞれ記載してください。
収入印紙
売上代金に対して領収書を発行する際は、金額が5万円以上なら課税対象となります。その場合、金額にあわせて収入印紙を領収書に貼り付ける必要があります。売上代金に応じた収入印紙の金額は、以下のとおりです。
金額 | 税額 |
5万円未満 | 非課税 |
5万円以上100万円以下 | 200円 |
100万円超から200万円以下 | 400円 |
200万円超から300万円以下 | 600円 |
300万円超から500万円以下 | 1,000円 |
500万円超から1,000万円以下 | 2,000円 |
※参考:No.7105 金銭又は有価証券の受取書、領収書|国税庁
源泉徴収は但し書きに
源泉徴収を行っている場合は、源泉徴収に該当する額を含めた金額を領収書に記載しましょう。また、但し書きの部分に源泉徴収を含んでいる旨を記載します。源泉徴収について記載した領収書の書き方の例をあげると、以下のとおりです。
領収書
○年○月○日
◯◯ 様
¥◯◯, ◯◯-
○○○代として
上記のとおり領収いたしました
但し,所得税として10.21%の源泉徴収を含む
住 所:○○○
氏 名: ○○○ 印
領収書のルール
領収書を扱う際は、さまざまなルールに従う必要があります。ここでは、領収書のルールについて解説します。
保管期間は7年
一度発行された領収書は、基本的に7年間保管しなければなりません。法人の場合、法人税法により原則として7年間領収書を保管する義務が定められています。個人事業主の場合、青色申告なら7年間、白色申告なら5年間領収書を保管する義務があります。後から税務署の確認が入った際に提示する必要があるため、領収書は大切に保管しておきましょう。
支払いがクレジットカードの場合
クレジットカード払いが行われた際は、金額が5万円以上だとしても収入印紙を貼って納税する必要はありません。クレジットカードによる支払いであるとわかるよう、領収書にその旨を記載しましょう。たとえば、「クレジットカード取扱」や「クレジットカード利用」などと記すと、後から確認した際もわかりやすいです。
再発行を求められたら
相手が領収書を紛失した場合、領収書の再発行を依頼されるケースもあります。しかし、安易に領収書を再発行すれば、相手に不正使用されるリスクもあるため注意が必要です。領収書を再発行する際は必ず「再発行」の表示をつけましょう。また、領収書を最初に発行した日付ではなく、再発行した日付を記載します。
領収書とインボイス制度
2023年からインボイス制度が始まります。ここでは、領収書とインボイス制度の関係について解説します。
インボイス制度とは
インボイス制度とは、消費税の仕入税額控除の記載に関する新しい制度です。消費税の仕入税額控除とは、商品を仕入れた際と販売した際の消費税の差額を計算して二重課税を防ぐ方法です。
より正確に税務処理を進めるため、インボイス制度では仕入額控除の対象を適格請求書(インボイス)のみとしています。インボイス制度が始まるのは、2023年10月1日からです。インボイス制度の導入後は、領収書に記載すべき項目も変化します。
区分記載請求書等保存方式
インボイス制度が始まる前の2019年10月から2023年9月までの4年間は、経過措置として区分記載請求書等保存方式で領収書を作成することになっています。区分記載請求書等保存方式では、通常の領収書に記載する項目以外にも含めるべき項目があります。
具体的には、軽減税率の対象品目、税率ごとの税込金額が必要です。登録番号は、インボイス制度への対応を税務署に登録する際に割り当てられる番号です。
領収書作成の注意点
領収書を作成する場合、どのようなことに注意したらいいのでしょうか。ここでは、具体的な注意点を解説します。
収入印紙が必要か確認する
収入印紙が必要かどうかは、金額や支払方法によって異なります。金額が5万円以上なら、印紙税法の定めにより収入印紙の貼りつけが必要です。金額を確認し、必要な場合は収入印紙を貼り忘れないようにしましょう。
クレジットカード払いなら金額がいくらでも収入印紙は不要です。そのため、支払方法も確認したうえで領収書を作成してください。
但し書きの記載に気をつける
領収書を作成する際は、但し書きの記載にも注意が必要です。「お品物代」や「お品代」では何のために金銭がやり取りされたのかわからないため、税務調査の際に経費として認められない可能性があります。税務署から指摘を受けないようにするには、但し書きを具体的に記載して内容を明確にすることが大切です。
押印が必要か確認する
法律上、領収書への押印は必須ではありません。ただし、通例として、書類の証拠力を高める目的で領収書に押印が行われています。その場合でも、印鑑の種類に決まりはありません。
取引相手によっては押印を必須と捉えている場合もあるため、押印を行ったほうがスムーズにやり取りが進むでしょう。
まとめ
領収書を作成する際は、さまざまなルールを守る必要があります。必要な項目を網羅し、有効な領収書を作成しましょう。ただし、領収書の作成枚数が多いと、ミスも起きやすくなります。手作業で対応している場合は、請求業務をミスなく効率的に行える専用ソフトがおすすめです。
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