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[非表示]証憑(しょうひょう)は、企業の入出金の記録の元となる非常に重要な書類であり、法律に基づいて一定期間の保存が義務づけられています。しかし、あまり馴染みがなく「よくわからない」という方も多いのではないでしょうか。
この記事では、証憑とは何か、証憑の重要性と種類、そして証憑の電子化について幅広く解説します。
証憑とは?読み方・意味・使い方を紹介
「証憑」は「しょうひょう」と読み、取引の内容を証明するための書類を意味します。
「裁判所や捜査機関が刑罰を判断するのに必要な一切の資料」を指す場合もありますが、企業の入出金の記録の元となる資料のことでもあり、企業にとって非常に重要な書類の1つです。
企業がその企業活動で入金・出金を行ったときには、それを書類・帳簿に記録することが法律によって義務づけられています。
その記録が証憑であり、証憑の具体例としては、契約書や領収書、請求書、納品書、各種伝票に加え、給与の支払明細書や履歴書、賃金台帳、返済予定表などがあげられます。
証憑書類とは?どんな種類がある?
ビジネスの現場では証憑は「証憑書類」と言われることもありますが、どちらも同じ意味です。
証憑書類(証憑)は大きく4種類あり、次のようになります。
売り上げなどのお金に関するもの
1つめは売り上げなどのお金に関するものです。
売り上げに関する「契約書」や「領収書」、「請求書」などがこれにあたり、いずれも取引や売買が行われたことを証明する書類です。
企業経営に直結する証憑書類であるため、特に重要であり、厳格な管理が求められます。
仕入れなどのモノに関するもの
2つめは仕入れなどのモノに関するものです。
「注文書」や「見積書」、「発注書」、「納品書」、「売上伝票」などがこれにあたるほか、レシートやクレジットカード・ATMの利用明細なども該当します。いずれも、モノの動きに関する具体的な証拠となる書類です。
従業員などのヒトに関するもの
3つめは従業員などのヒトに関するものです。
具体的には「給与支払明細書」や「履歴書」、「雇用契約書」、「賃金台帳」、「タイムカードの記録」など、従業員などのヒトに関わるものが広く含まれます。
そのほか、契約に関するものなど
4つめは、そのほか、契約に関するものなどで、企業の経営・業務に関わる書類のうち、これまで挙げた上記の3つ以外がこれに該当します。
「預金通帳」や事業所の「賃貸借契約書」、借入金の「返済予定表」などのほか、社内文書や各種帳簿などがこれにあたります。
証憑書類の保存期間とは?
証憑書類は法律によって一定の年数の間、保存することが義務づけられており、その保存期間は一般に7年です。
しかし、各証憑書類を扱う法律によって保存期間は異なっており、5年、7年、10年のものがあるので注意が必要です。
同じ証憑書類でも、その保存期間を定めている税法や会社法で保存期間が異なっていることがあります。その場合は保存期間が長い方が適用されることもご留意ください。
また、証憑書類の保存期間は法人か個人事業主かでも異なります。
法人におけるおもな証憑書類の保存期間と、それを定める法律については次の表のようになります。
証憑書類 | 保存期間 | 定める法律 |
---|---|---|
取引に関する書類 (契約書・見積書・発注書・請求書・領収書・納品書など) | 7年 | 法人税法 |
取引に関する帳簿 (現金出納帳・売掛帳など) | 7年 | 法人税法 |
会計帳簿 | 10年 | 会社法 |
計算書類 (賃借対照表・損益計算書など) | 10年 | 会社法 |
会計監査報告書 | 5年 | 会社法 |
電子取引の取引情報に係る電磁的記録 | 7年 | 電子帳簿保存法 |
個人事業主の場合の保存期間
先述の通り、証憑書類の保存期間は法人か個人事業主かによっても異なります。
個人事業主の場合では、たとえば、現金出納帳や売掛帳など取引に関する帳簿は保存期間が7年となり、契約書や見積書、発注書など取引に関する書類は保存期間が5年となります。
青色申告・白色申告によっても違いがありますので、必要に応じて、国税庁のホームページ等で確認しましょう。
証憑は電子化できる?電子化のポイントは?
1998年に施行された電子帳簿保存法により、証憑書類を電子化・データ化して保存することが可能となりました。
施行当初は適用範囲が限定的であったため、なかなか普及しませんでした。しかし、その後、電子帳簿保存法は改正を重ねて規制緩和が行われているのに加え、社会全体のテレワーク化の動きなどの影響もあって、経理業務の電子化が進んでいます。
証憑書類のデータを保存する方法としては、電子データ(電磁的記録)による保存のほか、マイクロフィルムによる保存、一部ですがスキャナによる保存が認められているものもあります。
しかし、完全に電子化されているわけではなく、手書きで作成されたものなど、電子化できない証憑書類もあるので注意しましょう。
さらに、電子化するにあたっては、適応を始める3か月前までに、管轄である税務署長に申請書を提出して事前承認を得る必要があります。そのため、余裕をもって準備しておくことが大切です。
また、以下の各保存方法について、定められた条件があり、これを満たさなければならないので、注意が必要です。
- 電磁的記録のよる保存
- マイクロフィルムによる保存
- スキャナによる保存
たとえば、電磁的記録による保存を行う場合、「最初の記録段階から一貫して電子計算機を使用して作成する帳簿書類で一定の要件を満たすもの」という条件がつきます。
つまり、手書きの書類は電磁的記録をすることができません。
マイクロフィルムによる保存には保存期間が6年目以降(一定の書類については4年目以降)という条件があるほか、使用するマイクロフィルムリーダまたはマイクロフィルムリーダプリンタも一定の基準を満たす必要があります。
そして、保存すべき書類のうち「棚卸表、貸借対照表及び損益計算書並びに計算、整理又は決算に関して作成されたその他の書類以外の一定の書類」については、スキャナ読み取りによる電磁的記録(スキャナ保存)が認められています。
電子化の導入にはまず、このような条件や対象となる証憑書類についてよく理解しておくことが重要です。導入・移行コストも必要となりますが、もちろんデメリットだけではありません。
大きなメリットとしては、膨大な量となる紙やインクなどを節約し、また、5年~10年の長期の保存に関わる場所と人のコストを削減できることがあげられます。
また、電子化していれば、電子取引で発行した電子請求書や電子領収書などをわざわざ紙ベースに直す必要もありません。
ほかにも、電子化することで情報へのアクセスが容易になるなど、業務の効率化を図れることもメリットになります。
昨今は、クラウドを活用した証憑保管・証憑管理システムの普及も進んでおり、電子化できるものについては、クラウドサービスを利用して保存しておくのも一つの手です。
証憑(しょうひょう)書類は、取引の内容を証明するための書類であり、企業においては入出金の記録の元となる非常に重要な書類です。
証憑書類は根拠となる法律によってその保存期間が異なっていますが、5年、7年、10年の保存が定められています。
また、この保存期間は法人か個人事業主か、また青色申告か白色申告かによっても違いがありますのでご注意ください。
規制緩和にともなって証憑書類の電子化も進んでおり、すべてではありませんが、電子化・データ化しての保存が認められています。
電子化することで、紙代やインク代、保管場所などのコストを削減できると同時に、業務の効率化を図ることができます。
クラウドサービスの普及も進んでいるので、利用するのもよいでしょう。