「本音と建前」の違いとは?ビジネスをする上で役立つ「建前」の実用方法を解説

2021年10月26日

日本に浸透している、「相手の気持ちを察する」という文化から生まれた本音と建前。ビジネスの場では特に多く用いられており、相手の本心が見えづらく、悩むこともあるかもしれません。

しかし、日本では本音と建前をうまく使い分けるスキルが不可欠です。この記事では、そもそも「本音」「建前」とは何なのかといった基本の情報から、実際にビジネスの場で使う例まで、上手に本音と建前を使いわけるためのポイントを解説します。

ビジネスにおける「本音と建前」とは?

“本音と建前”は日本人特有の価値観です。ビジネスのシーンでは、本当の気持ちである“本音”を他人に隠して、“建前”を提示しながら、交渉や要求を進めていくこともしばしばあります。人間関係を円滑にするために必要とされているスキルでもあります。

まずは、本音と建前、それぞれの意味を理解しておきましょう。

「本音」の意味

“本音”とは、嘘偽りのない本当の気持ちのことです。「表向きの気持ち」という意味である“建前”の対義語として使われます。人間関係を重視する日本のビジネスの場面では、本音を隠して話が進むことが多いです。

例えば、取引先から引き受けるのが厳しいと思われる金額を提示されたとしても、その場で断らず、「持ち帰って検討します」と一度、相手の思いを受け取ります。嘘をついているわけではなく、相手の気持ちを切り捨てないことが重要視されているのです。

反対に、この場面で「その金額は無理です」とはっきり伝えることが、本音を伝えるということです。しかし、前述のような文化が浸透している日本では、本音が歓迎されないことがほとんど。他人の気持ちを重視する日本ならではの習慣です。

「建前」の意味

嘘のない本当の気持ちである“本音”の対義語であり、本心を隠して遠回しに気持ちを伝えていくことが“建前”です。“嘘”と混同されがちですが、他人を騙す意思があるのが嘘であり、建前は騙すという意味はない点に注意しましょう。

海外では、交渉などの要求を提示する場面でまわりくどいことはしません。はじめに具体的な条件をはっきりと伝え、お互いの妥協点を探っていくことが多いです。

反対に日本では、どうしてほしいのか・いくらで頼みたいのかなどの本音をオブラートに包み、建前で対話を進める傾向があります。本音をぶつけて闘うことを美徳としないことから生まれた、独特の価値観です。

建築用語における「建前」とは?

ビジネスや日常用語で使う“建前”とは別に、建築用語にも建前という言葉があります。実はこの建築用語における建前が、ビジネスや日常で使う“建前”の語源といわれています。

建築用語でいう建前とは、家屋の骨組みが組み上がった状態のこと。棟上げ(むねあげ)と呼ぶこともあります。

棟上げが終わると上棟式を行い、大工さんへの感謝を込めて、無事に骨組みができあがったことをお祝いします。

ちなみに、家屋の骨組みを立てる前には、その土地に感謝し、挨拶をする意味合いがある「地鎮祭」が行われます。儀式的な地鎮祭と比べると、建前に際して行われる上棟式は、大工さんや地域の人への挨拶が中心であり、人間関係を重視した式です。

そのことから転じて、ビジネスを円滑に進めるための“建前”の語源とされています。

建前に潜む注意点とは?

本音より建前を使うことの多い日本のビジネスの場面。しかし、いつでも・どこでも建前ばかり使っていればいいというわけではありません。建前を使うことで起こるトラブルも少なからずあるからです。

ここからは、ビジネスで建前を使う際に気をつけるべき注意点についてお伝えします。

1. 建前ばかりでは仕事が進まないと意識する

まず、本音を隠した建前ばかりを伝えていては、なかなか前へ進みません。

のめない条件を提示されて「検討します」と伝え続けていても契約にはつながりませんし、「検討すると言ったのに嘘じゃないか」と、相手の機嫌を損ねてしまっては本末転倒。自分にとっても相手にとっても、無駄な時間を使うことになります。

人間関係を円滑にするためのツールとして建前を使うのは悪いことではありませんが、建前だけを使っていては意味がありません。建前を使い、よい関係性を構築するのは、あくまで本音を伝えやすくするための手段であることを念頭に置いておきましょう。

2. 場面によって本音と建前を使い分けるべし

場面や相手によって、本音と建前を使い分けることも重要です。

例えば、絶対に獲得したい取引先との交渉の際には、建前をうまく使って相手の本音を引き出すことに注力することが有効です。本当は何を求めているのかを探ることで、交渉をスムーズに進められます。

一方で、部下を注意する際には、言いたいことをオブラートに包んで遠回しに伝えても響きません。どこが悪いのか・どこを直したらいいのかといった指示をはっきりと伝えるほうが効果的です。

本音と建前どちらを使うのか、状況に応じて選びましょう。

3. 建前を見極める力も身につける必要がある

日本のビジネスの場面では、建前が多く飛び交います。相手も建前で話してくるということを忘れてはいけません。他人の発する建前を見極めるスキルが必要です。

会議などで出た発言がすべて本音とは限りません。発言をそのまま受け取るのではなく、裏側にはどのような本心が隠されているのか、本当のニーズはどこにあるのかを探っていきましょう。

建前として使われる言い回しをご紹介!

実際のビジネスの場面で見られる“建前”のシチュエーションを、3つご紹介します。もし、このような言い回しをされる場面に遭遇したら「これは本音ではなく、建前で言っているのかな?」と、相手の本心を探ってみてくださいね。

1. 上司から「マイペースだね」と伝えられたとき

上司から頼まれた業務のことで話があると呼び出されたとします。「不備があったのか」と話を聞くと、「君はマイペースだね」と言われました。このとき、あなたはどう受け取りますか?

文字通り「そうか、自分はマイペースなのか」と納得していてはいけません。上司が建前を使って話している場合、“マイペース”という言葉は、“作業が遅い”という言葉の裏返しの可能性があります。

いつまでに仕上げたらいいのか、どのクオリティを望んでいるのかを探り、できるだけ早めに提出したほうがいいでしょう。

2. 顧客から「仕事が残っているのでは?」と心配されたとき

取引先を訪問し、打ち合わせや商談をしている際に「まだ仕事あるんじゃないの?」と何気なく言われる場面。「自分のことを気遣ってくれているんだな」とほっこりしている場合ではありません。

本心からあなたの仕事量を心配して声をかけていることもあるでしょうが、建前で話している場合、本心は「そろそろ帰ってほしい」という気持ちです。「まだ仕事があるのだから早く帰ったらどうか」と、遠回しに帰ってほしいという思いを建前で伝えているのです。

何か不手際がなかったか、相手の思いを汲み取れなかった場面がなかったかなど、訪問の振り返りをする時間を作って反省をしたほうがいいでしょう。

3. 同僚に手伝いを申し出て断られたとき

忙しそうにしている同僚に手伝いを申し出た際、「あなたの業務もあるだろうから大丈夫」と断られたとします。このときもすぐに引き下がらず、相手の反応を見て判断しましょう。

もしかすると、本当は手一杯で猫の手も借りたい状況なのに、あなたに依頼するための準備をする余裕がなかったり、あなたに頼んだことでミスが出る可能性を不安に感じたりしている場合があります。

「この業務ならできます」「データ入力するので確認お願いできますか?」というように、具体的にできることや引き受けられる業務を伝えると安心です。

本音と建前を上手に使い分ける術

本音と建前は、相手の気持ちを害さないようにバランスよく使いましょう。建前をうまく使いながら相手との関係性を構築していき、本音を話せる間柄にしていくことが重要です。

建前は嘘ではありません。他人を陥れたり、騙したりするような言葉選びは厳禁です。あくまでも人間関係をプラスの方向に進めたり、他人を笑顔にしたりするために使う方法だということを忘れないようにしましょう。

例えば、お誘いを受けた時、行きたくない相手だからといって「あなたとは行きたくない」と伝えれば相手は傷つくもの。建前を使って「予定があるのでまた今度」などと、遠回しに本音が伝わるような言葉をかければ、関係性を壊さずに断ることができます。

日本における人付き合いは、相手を傷つけず、関係性を崩さないことが重要です。時に本音が見えずにヤキモキすることもあるかもしれませんが、関係を深めることで少しずつ本音を聞ける間柄になります。

相手の気持ちを優先し、本音と建前をうまく使い分けて、ビジネス上の人間関係を円滑に進めましょう。

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